Episode 5

癌との戦い

余命18ヶ月と宣告された時、人は、好きなことをやりながら、日々出来るだけ楽しく過ごすよう努めるのではないであろうか。ゲイリー・ルーミスと彼の妻スージーの場合、それは、釣りと同じ位好きなハンティングにでかけることだった。先の診断結果を聞くやいなや、彼らはアフリカ行きを決めた。

誕生日にアフリカでハンティングをして過ごしたかった。だから、ザンビアに行ったんだ。5日間かそこらだった。そこに滞在している間、スージーは、私にバースデイ・プレゼントを渡したかったんだろう。ある夜、キャンプに戻ると、多くの人が集まっていたんだ。そこには、祈祷師と呼ばれている男と、通訳である宣教師がいた。彼らは歌い、太鼓を叩き始めた。すると、その祈祷師と呼ばれている男はほどなくしてトランス状態に入った。祈祷師は、宣教師に向って何かを言った。宣教師は私に尋ねてきた「祈祷師があなたの体の上に手を置いても構わないか」と。

トランス状態から戻ってきた時、祈祷師は汗だくだった。祈祷師は宣教師を通じてこう言ってきた「あなたの下腹部には病気がある」と。そこで、私は言った「誰から何かを聞いたのか」と。すると彼は「何も聞いていない。それに、そんなこと前もって知り得る手段も私達にはない」と。さらに続けて「明日、私の家にボトルを三つ持って来なさい。あなたのための治療薬を用意しておく」と言ったのだった。

次の日、我々は、祈祷師の住む村へ行った。祈祷師の家の中に見慣れたものは何一つなかった。ただ、粘土で出来た鉢が3つ用意されていた。彼はその鉢から私のボトルにそれぞれ液体を注いだ。注ぎ終えると、祈祷師は、残りの液体を彼の助手に飲ませた。それが毒見であったのか、それとも、宗教的な儀式であったのか、私にはわからない。そして、祈祷師は宣教師を通じてそれぞれの服用法を説明した。

その液体を見下ろしながら私は妻に尋ねた「どうしたらいいものか」と。妻はこう言った「彼らアフリカ原住民は何千年も前から薬の調合を研究し続けているはずだから服用してみてはどう?」と。その言葉を信じ、私は服用した。服用は16日間に及んだ。それは私達の夫婦間ではある種のジョークにさえなっていた。

旅行から戻り、医者に行くと何故かPSA値は7.2から6.5に下がっていた。その時は医者には何も話さずにいた。そこから2ヶ月後、PSA値はさらに5.8まで下がっていた。その時も何も話さずにいた。そこからさらに2ヶ月後、PSA値はなんと4.2まで下がっていた。今度ばかりは医者から聞いてきた「信じられない。一体何が起こっているんだ」と。そこで、私はアフリカで出会った祈祷師の話と例の液体の話をした。話を終えた時、医者は私にこう言った「そのボトルの中身を何だったのか是非確かめたかった」と。

まるでナショナル・ジオグラフィックの記事のような話だが、この話はゲイリー自身に実際に起こった話である。インフルエンザの特効薬として知られているタミフルの原料は、実は中華料理の香辛料の一つとして知られるハッカクから抽出されたものだそうだ。こうした自然界に存在する動植物から抽出した成分で作られている薬品を生物薬というのだが、きっとゲイリーが服用した「3つの液体」にも、我々がまだ知らない癌にとても効く生物薬が含まれていたのかも知れない。いずれにしても、こうして癌を克服したゲイリーは、今もワシントン州ノース・フォーク・リバーの傍らで日々世界最高のブランクを作り出すべく、デザインに精を出しているのである。

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